いつものようにマイちゃんとジャムちゃんは、森の中で遊んでいました。
するとマイちゃんが大きな木のふもとに穴が空いているのを見つけました。
「ジャムちゃん、こんなところに大きな穴があるよ。」
「あっ!なんだろう?ちょっとこわいな。」
二人は穴の中をのぞきました。
どうやら、その穴は奥深く地面の中に続いているようです。
「よし、探検してみよう!」
ジャムちゃんが言いました。マイちゃんはちょっぴり怖かったけれども、ジャムちゃんの後を追いました。
暗い穴の中を進むと、天井から明るい光が差し込んでいるのが見えました。
「あ、明るくなっている。」
「よし、登ってみよう。」
穴から出ると、そこはマイちゃんのおうちの裏庭でした。
「あ、これは去年の台風で倒れてしまった、おばあちゃんの大好きな オレンジの木だわ。」
▶おばあちゃんのオレンジの木のエピソードはこちら
そうです、倒れた木の根元に大きなほこらが出来ていて、 その穴は森の中に続いていたのでした。
「マイちゃん、この近道は二人の秘密にしようね。」
「うん、これでいつでもジャムちゃんたちに会えるね。」
こうして、森とマイちゃんのおうちを結ぶ「秘密の近道」が発見されたのです。
それからというもの、ジャムちゃんは時々秘密の近道を通って、 マイちゃんのおうちに遊びに来ます。
ジャムちゃんは森の妖精なので、マイちゃん以外には見えません。
今日もマイちゃんのお部屋で遊んでいると、
「ねえ、ねえ、マイちゃん。あの洗濯物みたいなお魚はなんなの?」
「え~っ、洗濯物?あれは鯉のぼりよ。ジャムちゃん知らないの?」
窓から見える鯉のぼりを不思議そうに見るジャムちゃんに、
「あれはね、ジャムちゃん。端午の節句と言って昔から伝わる子どもの成長をお祝いするためのものなのよ。」
と、ママから聞いた話を説明しました。
「なんでお魚が空を泳いでいるの?」
「鯉が滝を登って、竜になる。と言う昔の伝説になぞらえて、 子どもが健康に大きく育って欲しいという願いが込められているんだって。」
「へえ~、おもしろいな。村のみんなにも教えてあげよう。」
二人はさっそく、秘密の近道で森の中へ。
森のみんなに鯉のぼりのお話をすると、みんなが不思議そうに顔を見合わせます。
マイちゃんに作ってもらったカブトをかぶって身振りや手振りで一生懸命 説明する二人に、メイじぃが言いました。
「昔、わしも聞いたことがあるよ。」
「端午の節句は、家族や親戚が集って、子どもの成長をお祝いして みんなが喜ぶお菓子や食事がでるんじゃよ。」
やっぱりメイじぃは物知りです。
「そうだ、にゃんこさんにこどもの日のおやつをつくってもらったらどうじゃ。」
メイじぃに教えられた子供たちはそろってにゃんこさんのお店にやってきました。
端午の節句のことを話すと、にゃんこさんは、
「わかったわ。それじゃ、簡単にできるジャムクリスピー なんかどうかしら。」
「みんなでお手伝いします!!」
さらににゃんこさんは教えてくれました。
「マシュマロとグラノーラでつくるのよ。サクサク感 がとってもおいしいの。」
▶ジャムクリスピーレシピはこちら
こうして、おいしいスイーツとマイちゃんが教えてくれた鯉のぼりやカブトの折り紙をつくって、
マイちゃんと森のお友達は端午の節句を楽しく過ごしました。
近頃マイちゃんは、絵日記を書き始めました。
今日あったことや、おいしかった食べ物、何して遊んだかをせっせと書いています。
そこへ、秘密の近道を通ってジャムちゃんが遊びに来ました。
「マイちゃん、何のお絵かきしてるの?」
ジャムちゃんは不思議そうにマイちゃんの手元をのぞきこみます。
「これはね、絵日記っていうんだよ。」
マイちゃんはジャムちゃんに絵日記のことをお話ししました。
とっても興味を持ったジャムちゃんは、自分でも書こうと思います。
二人は絵日記を書いて遊びましたが、しばらくしてジャムちゃんが言いました。
「ねえ、マイちゃん。これ森のみんなにも教えてあげようよ。」
「そうね。みんなで書いたらおもしろいかもね。」
そして二人は書きかけの絵日記と、ノートや色鉛筆を持って森のお友達に会いに行きました。
「ボクこんな遊びを考えたよ」
「わたしはチョウチョの絵を描いたわ」
「ボクなんか水遊びのこと描くんだ」
森の友達がみんな集まって、それぞれが絵日記を書き始めました。
楽しい時間が過ぎてゆきます。
マイちゃんはみんなの絵日記が見たくなりました。
ピョンコちゃんやジャムちゃんは森の中の遊びを書いていました。
ポンタ君はマイちゃんのことを書いています。
すると、モン吉くんがこう言ってみんなに自分の絵日記を見せてくれました。
「このあいだ、にゃんこさんに簡単なおやつの作り方を教わったんだ。
そのときのことを思い出しながら書いてみたんだ。」
どれどれ、とみんながモン吉くんの手元をのぞき込みます。
「おもしろいね。」
「おいしそうね。」
と、みんなが意見を言い合いました。
それは “杏仁豆腐キウイソース” というデザートでした。
「そうだ、ねえみんな、この ▶杏仁豆腐キウイソースってのを作ってみない。」
それから、メイじぃのところにキウイジャムをもらいにいったり、レオンさんのところに寒天をもらいに行ったりしながら、みんなで “杏仁豆腐キウイソース” を作ってみました。
そしてみんなで食べてみました。冷たくてとってもあまいおいしいおやつになりました。
マイちゃんはキウイの絵を描いたり杏仁豆腐の絵を描いたり、作り方の文章を書いたり、そのときの様子を絵日記に書きました。
そしてできあがった “杏仁豆腐キウイソース” をもってみんなでにゃんこさんのお店に行きました。
モン吉くんがにゃんこさんに言いました。
「にゃんこさん、このあいだはどうもありがとう。みんなで作ってみました。食べてみてください。」
「あらあら、みんなよくできてるわねえ。」
マイちゃんはいいました。
「にゃんこさん、わたし絵日記も書いたよ。」
にゃんこさんはマイちゃんの絵日記を見て、
「わあ~、上手にかけてるわね。これって立派なレシピよ。」
と言ってほめてくれました。
楽しい時間が過ぎて、にゃんこさんやレオンさんにお礼を言ってみんなとお別れしました。
マイちゃんはお部屋に戻って一人になって今日の絵日記を読み返しました。
「よ~し、この絵日記を見ながらママといっしょに作ってみようっと。」
そうです、絵日記がいつの間にかレシピ日記になっていたのです。
ひとりで納得したマイちゃんは、ちょっとウキウキした気分になりました。
さあ、これから楽しい夏休みがやってきます。
こうしてマイちゃんや森のみんなは毎日の出来事や、とっても気に入ったお料理などを絵日記としてたくさん描いていきます。
暑い夏が過ぎて、森の木々も色づいた頃、100年の森では秋の大収穫祭も終わりそろそろ冬支度の季節です。
いろいろなことがありましたが、みんな一生懸命お仕事をがんばったおかげで豊作の年になりました。
今年の収穫祭はみんなでパインジャムを作りました。
今日もマイちゃんは秘密の洞窟を通ってジャムちゃんたちに会いにいきました。
洞窟を抜けていつもの近道を歩いていると、遠くの方で「がさがさ、ゴソゴソ」と音がします。その近道は森の木がたくさん茂っていて、見通しがとても悪いところです。
マイちゃんはちょっと怖くなりました。
がさがさ、ゴソゴソ。
「ひょっとしてオオカミさんかな?」
マイちゃんは大きな木の陰から顔を出して音のする方を見てみました。
がさがさ、ゴソゴソ。
木陰になってよく見えないのだけれど、ジッ~と目をこらしてみていたら、赤い色をしたまあるいものがゆっくり動いています。
「なんだろ??」
赤くて丸いものはゆっくり動いたかと思うと、今度はスッ~といなくなりました。
マイちゃんは大急ぎで、森のお友達のところにいきました。
「ねえねえ、みんな。いま森で赤いおばけに会ったのよ」
マイちゃんはみんなにお話をしました。
すると。
「じつは、ぼくも見たんだ!」
ジャムちゃんが言いました。
「丸くて赤いのでしょ。わたしも見たわ」
今度はぴょんこちゃんです いつのまにか、それは「赤いおばけ」とみんなが呼び始めました。
「なんだろう?」
「きっと森のおばけだよ」
「そうじゃなくて、宇宙人だよ」
みんな勝手に言い合いました。
するとジャムちゃんが、こう言いました。
「じゃあ、みんなで確かめにいこうよ」 それからみんなは恐る恐る、でもちょっぴり楽しみに森の中に出かけていきました。
「私が見たのはこの辺よ」
マイちゃんが言うと
「そうそう、私もこの辺」
とピョンコちゃんが言います。
みんなはひとかたまりになって、じっと待っていました。 するとどうでしょう、
がさがさ、ゴソゴソ、がさがさ、ゴソゴソ
あの音が聞こえてきます。
みんなは「しぃ~」と口に指を当てて静かに声をださないように、音のする方を見守ります。~
遠くに、赤い丸いものがゆっくりあらわれると、す~っと去っていきました。
「ねえ、見た?見た?」
「うん、見た見た!」
みんなは目を丸くし興奮して大騒ぎです。
「あれはなんだろう?」
「もっと近くによって確かめたいな」
そしてみんなは赤く丸いものが見えた近くまでやってきました。
そこには重たい荷物を引きずったように草が倒れています。
その時でした。
がさがさ、ゴソゴソ
今度は後ろからあの音がしました。
あわてふためいて、みんなが振り返ると、
「おや、みんな。こんなところでなにやってるのかね?」
メイじぃが真っ赤な服を着て、大きな荷物を肩にかついで、運んでいるところでした。
みんなはびっくりしました。メイじぃもびっくりしています。
赤くて丸いものの正体はメイじぃだったのです。
「そうか、そうか。ごめんごめん。」
みんなの話を聞きながらメイじぃは頭をポリポリかいて謝りました。
「じつはな、もうじきクリスマスじゃろ。今年は子供達みんなが、がんばって大人の手助けをしてくれたから大豊作じゃ。それでサンタさんの衣装を着て、みんなにプレゼントを届けようと思ったのじゃよ。」
そうです、メイじぃはクリスマスの日にサンタになってみんなのおうちにプレゼントを運ぶ準備をしていたのでした。
大きな袋の中には子供達の大好きなおもちゃとあの収穫祭の時に皆で作ったパインジャムが入っていました。そのときの様子を絵日記に書きました。
「クリスマスの日まで、秘密にしようと思っていたが、ばれちゃったね。」
みんなは安心しましたが、メイじぃはちょっとがっかりしています。
「せっかく秘密にして驚かせようと思っていたのに・・・・」
そこでマイちゃんが言いました。
「もういっぱい驚いたから、大丈夫。でも~おもちゃはわかるけど、パインジャムって珍しいね」
メイじぃはこう言いました。
「ああ、それは ね、100年の森の家庭では、毎年クリスマスの日に ▶グリルチキンのパインジャムスパイシーソースをつくるのじゃよ。だからみんなのおうちに配るのじゃ。」
100年の森とっておきのお料理です。
マイちゃんもママに作ってもらおうと、村に行ってレオンさんやにゃんこさんにその作り方を教わりました。
そしてそれを絵日記レシピにしておうちに持って帰りました。
でも、まだママには見せません。もっとクリスマスが近づいてきたら、ママにお願いするつもりです。今からとっても楽しみです。
今年は色々なことがあった1年でした。
100年の森にはじめて迷い込んだあの日から、森に住むたくさんのお友達ができました。そして果物のことやジャムのこと、ジャムを使ったお料理のことなど、たくさん勉強しました。
「また今度100年の森をたずねたら、どんな楽しいことがあるかなぁ~」