ジャムちゃんはマイちゃんをスプレッドの洞窟につれて行きました。
そこで、マイちゃんは森の長老、伝説のジャム職人メイじぃに出会いました。
メイじぃは目を見はりました。
森の妖精は心の美しい人間にしか見えないからです。
でも、マイちゃんはジャムちゃんと仲良くお話ししています。
メイじぃは言いました。
「キミは私たちが見えるのかい?」
「はい、見えますよ。」
ジャムちゃんはマイちゃんのことをメイじぃに話しました。
「なるほどマイちゃんは、道に迷ってしまったのか、じゃぁワシがあとで森の出口まで送ってやろう。しかし、困ったな。いま、イチゴジャムを作っている最中だ、これができあがってからでいいかい。」
「はい。お願いします。ジャムづくり、私にも手伝わせてください。」
こうして、マイちゃんはメイじぃとジャムちゃんとその仲間たちといっしょにジャムづくりをはじめました。
マイちゃんはメイじぃにジャムづくりについて色々とおしえてもらいました。まず、メイじぃはマイちゃんとジャムちゃんといっしょにイチゴ畑に行きました。
メイじぃは言いました。
「赤くかがやいたイチゴの実が美味しいジャムになるのじゃよ。」マイちゃんとジャムちゃんは赤くかがやいたイチゴの実をたくさん摘みました。
たくさんのイチゴの実をもって、メイじぃたちはジャム工場に行きました
。
つぎに、たくさんのイチゴと砂糖とペクチンと酸味料を大きななべに入れてぐつぐつ、ぐつぐつ… 大事に、大事に炊きあげます。
メイじぃは教えてくれました。
「ペクチンって知っているかね。ペクチンはりんごやレモンやオレンジなど、果実からできているんじゃよ。とろりとした美味しいジャムを作るのに欠かせない材料のひとつじゃ。」
すると、大きななベでぐつぐつイチゴジャムを煮込んでいたブウママがほほえみながら、やさしくマイちゃんに言いました。
「イチゴでも、ブルーベリーでも収穫する時期や、品種によって甘さが違ってくるし、味だって違うの。それぞれの果実にあった作り方があるのよ。」
メイじぃが言います。
「製法の使い分けじゃ。それぞれ果実の個性がある。果実の個性を見極めることが職人の腕の見せどころじゃよ。」
~ それと同時に大きな 「ぐぅーっ」という音が聴こえました。
マイちゃんとジャムちゃんのおなかの音です。
おなかがすいてしまったんですね。
メイじぃは言いました。
「イチゴジャムができたよ。最後の仕上げにとりかかろう。」
大きななべから、赤くつやつやしたイチゴジャムを瓶に詰めます。
マイちゃんはおみやげにメイじぃとつくったジャムをもらい、おうちに帰ります。
メイじぃは言いました。
「わしが思うジャムの美味しさは、果実のしっかりした味わいが楽しめるジャムじゃ。
それぞれの果実によって、それぞれの果実の個性がある。
美味しいジャムを作るにはそれぞれの果実の個性を大事にして、特徴をいかしてジャムを作るんじゃよ。
もちろんジャムちゃんや他の仲間たちもそう思っている。
そういう思いが、また、ジャムを美味しくするんじゃな。また、おいで。」
マイちゃんは思いました。
「ジャムづくりって大変なんだなぁ。」
マイちゃんは森のジャム工場でジャムづくりの楽しさや難しさ、美味しさのひみつをまなび、ジャムがまた大好きになりました。
風の強いある日、おばあちゃんが大切に育てていたオレンジの木が倒れてしまいました。
おばあちゃんは毎年、そのオレンジでマーマレードを作るのを楽しみにしていていました。
おばあちゃんは、かなしくて、倒れてしまいました。
「ねえ、マイちゃん。おばあちゃんの大好きなオレンジマーマレードはもう作れないのかしら。」
おばあちゃんは残念そうに言いました。
「でも、おばあちゃん、もう、おうちの庭にはオレンジの木がないわ・・・」
おばあちゃんのかなしそうな顔を見たマイちゃんは「私、森にオレンジの木をさがしに行ってくる!」
マイちゃんは、おばあちゃんに元気になってほしいと願い、森にオレンジの木をさがしに行きました。
森についたマイちゃんは、願いを込めて、ジャムちゃんを呼びました。
「ジャムちゃ~ん! ジャムちゃ~ん! 出てきて!」
しばらくすると、マイちゃんの声をきいて、ジャムちゃんがあらわれました。
「やあ、マイちゃん。こないだのイチゴジャムはおいしかった?」
「この前はどうもありがとう。とってもおいしかったわ。」
マイちゃんはジャムちゃんに、おばあちゃんが大切にしていたオレンジの木が倒れてしまったことを、お話ししました。
かなしんでいるマイちゃんに、ジャムちゃんは言いました。
「そうだ、ヤギおじさんの畑にいってみよう。オレンジの木があるはずだよ。」
森の仲間が集まってきました。ポンタくん、ぴょん子ちゃんは言いました。
「おいしいオレンジマーマレードを作って、おばあちゃんを元気にしよう!」
みんなでヤギおじさんの畑にやってきました。
ヤギおじさんは言いました。
「うちの畑はオレンジがいっぱいなっているよ。すきなだけとってお行き。」
みんな、両手に持ちきれないほど、たくさんのオレンジをもらいました。
マイちゃんは言いました。
「これでおいしいオレンジマーマレードが作れるわ。ヤギおじさんありがとう。」
たくさんのオレンジを抱え、メイじぃのいるジャムエ場に行き、おいしいオレンジマーマレードを作りました。
マイちゃんは言いました。
「このオレンジマーマレードを食べたら、きっと、おばあちゃんは元気になるわ。」
メイじぃは言いました。
「マーマレードは、料理に使ってもおいしいんじゃよ。レオンさんに、教えてもらいなさい。」
みんなで、できたてのマーマレードを持って、森いちばんのシェフ、レオンさんに会いにいきました。
「マーマレードはお肉との相性もいいんだよ。
今日は、マーマレードを使って、おいしいスペアリブを作ろう。」
▶オレンジマーマレードを使ったスペアリブのレシピはこちら
「マーマレードはスイーツを作ってもおいしいよ。
みんなでにゃんこさんのお店に行ってごらん。」
すると、にゃんこさんがやさしく教えてくれました。
「オレンジではないけど、日向夏みかんのマーマレードをつかったカステラがとってもおいしいのよ。」
▶日向夏マーマレードを使ったスイーツのレシピはこちら
マイちゃん、ジャムちゃん、森の仲間たちは言いました。
「ジャムやマーマレードって、おいしい色々な食べ方があるんだなあ。」
「畑のヤギおじさんやシェフのレオンさん、にゃんこさんとかプロの人のお仕事も、とっても勉強になったわ。」
マイちゃんはジャムやマーマレードのおいしさを知り、また、大好きになりました。
暑い夏が終わって、森の木々も黄色く色づきはじめました。
マイちゃんは久しぶりに、森の中へ出かけて行きました。
キラキラする夏も良かったのですが、秋の森はとっても気持ちの良いにおいや心地の良い風が吹き抜けていきます。
どんどん森の中に進んでいくと、どこからかジャムちゃんの声が聞こえてきました。
「やあ、マイちゃんしばらくぶりだね。」
「あ、ジャムちゃんにポンタくん、それにピョンコちゃんも。」
「ヤギおじさんの畑にりんごがたくさんなったんだ。」
「今日は村の収穫祭よ。採れたリンゴを使ってメイじぃがリンゴジャムを作るからこれからお手伝いに行くところよ。」
「お手伝いが終わったら、収穫祭が待ってるよ。マイちゃんも来るかい?」
マイちゃんは、おいしそうなリンゴジャムを思いうかべワクワクしてきました。
メイじぃのジャム工場に入ると、新鮮なリンゴの香りやリンゴジャムの甘い香りがお部屋中にいっぱい広がっています。
しばらくお手伝いをするとマイちゃんはいいました。
「私もちょっと食べてみたいな。」
それを聞いたメイじぃは、さっそく、たくさんのリンゴジャムを並べはじめました。
「マイちゃん、これらのジャムを食べくらべてごらん。」
目の前にたくさんのリンゴジャムが並び、
マイちゃんはうれしくなりました。
でも、マイちゃんは思いました。
「全部リンゴジャムでしょ?何がちがうのかな...」
「いいから食べてごらん。」
メイじぃがほほえみながらいいました。
マイちゃんが食べてみると...
「このリンゴジャムは甘~くて、おいしい。こっちはりんごがたくさん入っている。あれ...、このリンゴジャムとこっちのリンゴジャムはりんごの形が違う!」
マイちゃんは思いました。全部リンゴジャムなのに、みんな違う!
「マイちゃん、よくわかったね。ここに並べているジャムは全部リンゴジャムじゃ。でも、甘味の強さやリンゴの形や食感がぜんぶ違うのじゃよ。同じジャムなのに違ったおいしさがあるじゃろ?」
「砂糖の量や材料の切り方を変えたりして、同じ素材で作っても異なるジャムを作ることができるのじゃ。マイちゃんやジャムちゃんも水玉が好きだったり、花柄が好きだったり、それぞれ好みは異なるものじゃ。」
「個性がある分、好みもいろいろ。わしは皆の笑顔が見たいから
100 年間のあいだ、いろいろなジャム作りを勉強して作れるようになったんじゃ。
マイちゃんにはちょっと難しかったかな。まぁ、大きくなったら教えてあげようかのう。」
マイちゃんはちょっと難しいなと思いながらも、ちょっぴり大人の仲間入りができた気分になり誇らしく思いました。
今日は村の収穫祭です。
メイじぃやブウママは、できたばかりのリンゴジャムをたくさん持ってきました。
ヤギおじさん家族は採れたばかりの野菜やミルクを運びます。
そうして村のみんなが森の広場に集まり、新鮮な果物や採れたての野菜を囲んでお祭りが始まりました。
レオンさんやにゃんこさんの腕によりをかけたごちそうも並びます。
もちろんマイちゃんがお手伝いしたあのリンゴジャムも。
みんなが笑顔で踊っています。
ジャムちゃんやポンタ君が歌っています。
メイじぃやヤギおじさんたちは目を細めて手拍子をしています。
今年も日照りや台風、洪水など困ったことも起こりました、みんなで力を合わせてがんばりました。そして一年間の苦労が笑顔に変わる時が来たのです。
メイじぃがそっとマイちゃんにささやきました。
「お天気や災害はどうしようもないものじゃ。
でもね、マイちゃん。マイちゃんのおばあちゃんのオレンジの木が倒れたときでも、
みんなで助け合ってマーマレードができたように、仲間が信頼して助け合うことが大切なのじゃよ。」
そしてジャムちゃんたちを呼んで、こういいました。
「マイちゃんもジャムちゃんもこれから少しづつ大人になっていく。助け合うことは大切じゃが、お友達を大切に思う心も肝心じゃよ。君たちはこれからも、いいお友達でいるんじゃよ。」
「みんなで育てて、みんなで収穫したり、ジャムを作ったり。そして自然に感謝したり。森のみんな、力を合わせることを教えてくれてありがとう。こんな素敵な村の住人を教えてくれてジャムちゃんありがとう。」
マイちゃんは感謝の気持ちでいっぱいになりました。
そして、もっともっとジャム作りを教えてくれるというメイじぃにもありがとう。
心の中で思いました。